見慣れたWebサイト観察に遊び心を 短時間でできる簡単テクニック
はじめに
日々の業務で様々なWebサイトに触れることは、多くのクリエイティブ職にとって欠かせない行為かもしれません。参考になるデザインを探したり、実装のヒントを得たり、競合サイトを分析したりと、その目的は多岐にわたります。しかし、目的意識が強すぎると、サイトを見る行為自体がややもすれば単調な作業となり、新しい発見や純粋な好奇心が薄れてしまうこともあるのではないでしょうか。
慣れ親しんだサイト、あるいは頻繁に訪れるサイトでも、少し視点を変えて「遊び心」を持って観察してみると、新鮮な気づきやアイデアの種が見つかることがあります。これは気分転換になり、その後の業務効率や発想にも良い影響をもたらす可能性があります。
この記事では、普段見慣れたWebサイトの観察に、ほんの数分から始められる遊び心を取り入れるための簡単テクニックをいくつかご紹介します。
短時間でできるWebサイト遊び心観察テクニック
テクニック1:開発者ツールで「分解」してみる
Webデザイナーにとって、ブラウザの開発者ツール(Chrome DevToolsなど)は日頃から使う必須ツールの一つです。通常は要素の検証やデバッグに使いますが、これを「サイトの構造を遊び心を持って解剖するツール」として使ってみましょう。
- 具体的な方法:
- 気になるWebサイトを開き、開発者ツールを起動します。
- 普段はあまり見ない、特定の要素(例えば、フッターの隅にある小さなリンクや、隠し要素のようなもの)を選んでみましょう。
- その要素にどのようなCSSが適用されているか、DOM構造のどのあたりに位置しているかを確認します。
- 普段使わないCSSプロパティや、意外なクラス名・ID名が付いているかもしれません。
- 簡単なアニメーションやホバーエフェクトがあれば、「この動きはどうやって実現しているのだろう?」とCSSやJavaScriptのソースコードを覗いてみるのも良いかもしれません。
- 遊び心ポイント: 探偵になった気分で、「なぜこの要素はこうなっているのだろう?」「このクラス名の意図は?」と問いかけながら見てみましょう。普段の業務では深く検証しない部分にあえて時間をかけてみるのがポイントです。
- 必要な時間: 5分〜10分程度。
- 期待できる効果: 実装の仕組みに関する知識が深まる、新しいCSSプロパティやJavaScriptの記述方法を発見する、Webサイト全体の構造を技術的な視点から理解する。
テクニック2:「色」や「フォント」に特化して見てみる
Webサイト全体のデザインを見るのではなく、特定の要素、特に「色」や「フォント」という絞り込んだ視点だけで観察してみましょう。
- 具体的な方法:
- ColorZillaのようなカラーピッカー拡張機能や、開発者ツールを使って、サイト内で使われている色をいくつか拾ってみます。メインカラー、サブカラー、アクセントカラー、テキストカラー、背景色など。
- 同様に、開発者ツールでフォントファミリーを確認します。見出し、本文、ボタンなど、要素ごとにどのようなフォントが使われているか、フォントサイズや行間はどう設定されているかを見てみましょう。
- サイト内で使われている写真やイラストの色合いが、サイト全体の配色とどのように調和しているかにも注目します。
- 遊び心ポイント: サイトの目的なしに、ただひたすら「色の組み合わせだけ」を評価してみたり、「このフォント、もし全く別のジャンルのサイトで使ったらどう見えるだろう?」と想像してみたりしましょう。普段の業務で選びがちな色やフォントの傾向から一度離れて、意識的に違った組み合わせやスタイルに目を向けるのが面白いかもしれません。
- 必要な時間: 5分〜10分程度。
- 期待できる効果: 配色やフォント選びの引き出しが増える、異なる色やフォントの組み合わせが与える印象について新たな気づきを得る、デザイン原則(コントラスト、統一感など)を実例を通して再確認する。
テクニック3:あえて「普段使わないデバイス」で見てみる
多くのWebサイトはレスポンシブデザインに対応していますが、普段自分が見ているデバイス(例えばPCの大きな画面)以外の環境での表示は意外とチェックしないかもしれません。そこで、あえて普段使わない、あるいは極端なデバイス環境でサイトを見てみましょう。
- 具体的な方法:
- ブラウザの開発者ツールにあるデバイスエミュレーション機能を使います。
- 最新のスマートフォンだけでなく、少し前の古い機種の解像度を選んでみる、あるいは非常に小さな、あるいは非常に大きなカスタム解像度を設定してみます。
- または、横長のタブレット表示や、あまり一般的ではないデスクトップ解像度などを試してみます。
- 遊び心ポイント: 「このサイト、このサイズだとどうなるかな?」「レイアウト崩れないかな?」といった少し意地悪な視点で見てみるのも一興です。開発者がどのような breakpoint を設定しているか推測したり、意外な表示の崩れや、逆に工夫されたレイアウト発見したりすることを楽しむことができます。
- 必要な時間: 3分〜5分程度。
- 期待できる効果: レスポンシブデザインへの理解が深まる、様々なデバイス環境におけるユーザー体験について考えるきっかけになる、予期せぬ表示から新たなデザインアイデアや実装方法を思いつく。
テクニック4:「目的外」の要素に注目してみる
Webサイトはデザインや機能性だけでなく、様々な要素で構成されています。普段の業務ではあまり意識しない「目的外」の要素に焦点を当てて観察してみましょう。
- 具体的な方法:
- サイト全体の「トーン&マナー」や「空気感」に注目します。使われている言葉遣い、写真の雰囲気、イラストのスタイルなどが、ターゲットユーザーやサイトの目的に合っているか、あるいはどのような印象を与えているかを考えます。
- もしサイトにブログやコラムがあれば、記事のタイトルや文章の構成、書き出し方などを読んでみます。
- 使用されているアイコンのデザインスタイル、要素間の余白の取り方、インタラクションがない静的な部分など、普段見過ごしがちな細部に注目します。
- 遊び心ポイント: そのサイトを構成する要素(テキスト、画像、レイアウトなど)それぞれに擬人化したり、他のメディア(音楽、映画、建築など)に例えてみたりするのも面白いかもしれません。「このサイトは、もし音楽ジャンルならジャズっぽいな」「この写真のトーンは、あの映画のワンシーンみたいだ」のように、自由な発想で連想を広げてみましょう。
- 必要な時間: 5分程度。
- 期待できる効果: デザイン以外の要素からもインスピレーションを得る、抽象的な概念を具体的な要素に落とし込む練習になる、サイト全体の調和やユーザーに与える複合的な印象への意識が高まる。
遊び心ある観察の小さな効果
これらのテクニックは、どれも数分から10分程度の短時間で試せるものです。完璧な分析を目指すのではなく、あくまで遊び心を持って視点を変えることが目的です。
例えば、普段コーディングに詰まっている時に、全く関係ないジャンルのサイトを「フォント」という視点だけで眺めてみる。あるいは、デザインのアイデアが出ない時に、過去に見たことのあるサイトを「意地悪くデバイスエミュレーターで見る」という遊びをしてみる。こうした行為が、脳をリフレッシュさせたり、思わぬ発見から別のアイデアに繋がったりする可能性があります。
あるWebデザイナーが、休憩中に全く興味のない商品ジャンルのECサイトを「使われている写真の色味だけ」に注目して見ていたところ、自身の担当案件では考えつかなかった色の組み合わせや、写真と背景色の意外なマッチングを発見し、デザインに取り入れたという小さな事例もあります。
まとめ
日々のWebサイト観察に遊び心を取り入れることは、単調になりがちな業務に小さな刺激を与え、気分転換や発想転換に繋がる可能性があります。開発者ツールでの「分解」、色やフォントに特化した観察、様々なデバイスでのチェック、そして目的外の要素への注目など、どのテクニックも短時間で実践可能です。
ぜひ今日からでも、いつものWebサイトを少し違う視点で、遊び心を持って見てみてはいかがでしょうか。そこから生まれる小さな発見が、あなたの仕事に新たな彩りを加えてくれるかもしれません。